自己破産は、借金の支払い義務が免除される債務整理です。
自己破産を検討している方のなかには「連帯保証人にどのような影響が及ぶのかを知りたい」「迷惑をかけないための対策が知りたい」このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
自己破産を実行すると、連帯保証人に残額の支払いが求められます。
一括で借金の残債を返済する必要があるため、場合によっては連帯保証人も自己破産に追い込まれる可能性があります。
この記事では、自己破産で連帯保証人が受ける影響、連帯保証人に迷惑をかけたくない場合の対処法などについてまとめました。
自身が連帯保証人を設定した借金があり、自己破産を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
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連帯保証人と保証人の違い
まずは、連帯保証人と保証人の違いを確認しましょう。
分別の利益
連帯保証人に分別の利益はありませんが、保証人にはあります。
分別の利益とは、複数人の保証人で借金の支払い義務を分別できる仕組みです。
たとえば、債務者の借金が300万円(税込)あり、保証人が3人設定されている場合、一人ずつ100万円(税込)の支払い義務を負います。
一方、連帯保証人に分別の利益はないため、債務者が300万円(税込)の借金をしており、3人の連帯保証人が設定されていても、それぞれの連帯保証人が300万円(税込)の支払い義務を負います。
連帯保証人には分別の利益がなく、保証人よりも大きな責任を負う可能性があると理解しておきましょう。
催告の抗弁権
連帯保証人に催告の抗弁権はありませんが、保証人にはあります。
催告の抗弁権とは、債務者が返済不能になり、自身に借金の返済を求められた場合に、まずは債務者に請求するように主張できる権利です。
たとえば、会社の同僚から頼まれて保証人になったものの、同僚が返済できず、債権者が保証人である自身に支払いを請求したとします。
上記の場合、保証人であれば同僚に対して請求するように主張できます。
一方、連帯保証人に催告の抗弁権は認められていないため、債権者に支払いを求められたとしても、拒否できません。
たとえ、債務者に支払える余裕がある場合でも、債権者が連帯保証人に支払いを請求したら拒否はできない仕組みです。
検索の抗弁権
連帯保証人に検索の抗弁権はありませんが、保証人にはあります。
検索の抗弁権とは、債務者の代わりに返済するよう求められた場合に、債務者が所有している財産を差し押さえるように主張できる権利です。
たとえば、友人の借金の保証人になったものの、友人が返済できず、債権者が自身に返済を求めてきたとします。
上記の場合、すぐに返済する必要はなく、まずは友人の財産を差し押さえ、返済に充てるように主張できます。
一方、連帯保証人に検索の抗弁権はないため、債務者の財産を差し押さえるように主張できません。
債務者に返済に充てられる財産がある場合でも、返済を拒否できないと把握しておきましょう。
自己破産した際に連帯保証人が受ける3つの影響
自己破産した際に連帯保証人が受ける影響は、次の3つです。
- 借金の残額の一括返済を求められる
- 財産が差し押さえられる可能性がある
- 連帯保証人も自己破産する可能性がある
順番に解説します。
借金の残額の一括返済を求められる
債務者が自己破産した場合、連帯保証人は借金の残額の一括返済を求められます。
連帯保証人は、債務者の代わりに返済義務を負う役割です。
さらに連帯保証人には、保証人に認められている分別の利益がないため、複数人の連帯保証人が設定されていても、全額を一括返済する必要があります。
また、催告の抗弁権や検索の抗弁権もありません。
まずは債務者に請求するように主張したり、債務者の財産を差し押さえるように主張したりできないため、債権者から請求されたら返済する必要があります。
連帯保証人に迷惑をかけたくない方は、自己破産ではない方法で借金を返済しましょう。
財産が差し押さえられる可能性がある
債務者が自己破産を実行すると、連帯保証人の財産が差し押さえられる可能性があります。
債務者が自己破産し、返済不可能になると、連帯保証人に返済義務が移ります。
しかし連帯保証人も返済できない場合があるでしょう。
上記の場合は、連帯保証人の財産を差し押さえて、返済に充てます。
自身が自己破産を実行した結果、連帯保証人の財産が差し押さえられる可能性があるため、実行する際は慎重に検討しましょう。
連帯保証人も自己破産する可能性がある
債務者が自己破産すると、連帯保証人も自己破産に追い込まれる可能性があります。
連帯保証人は一括で借金の返済を求められますが、なかには返済する余裕がなく、自己破産を選択する他ない方も多いです。
少額の借金の連帯保証人であれば、一時的に業者から借金して返済できますが、高額な借金の場合は非常に難しいです。
自身の責任で、連帯保証人が自己破産に追い込まれる可能性があると頭に入れておきましょう。
自己破産時に債務者が連帯保証人にしてはいけないこと
自己破産時に債務者が連帯保証人にしてはいけないことは、次の2つです。
- 連帯保証人にお金や財産を渡さない
- 連帯保証人の存在を隠さない
一つずつ解説します。
連帯保証人にお金や財産を渡さない
自己破産する際は、連帯保証人にお金や財産を渡してはいけません。
自己破産時に連帯保証人にお金や財産を渡すと、免責不許可事由に該当し、自己破産できなくなる可能性があります。
まずは自己破産の手続きを済ませましょう。
連帯保証人の存在を隠さない
自己破産の際は、連帯保証人の存在を隠さずに実行しましょう。
自己破産によって連帯保証人に迷惑をかけたくないからと、債務整理の実行を隠そうと考えている方も多いです。
しかし、連帯保証人が設定されている借金を隠すと、免責不許可事由に該当し、自己破産できなくなります。
自己破産を実行できないリスクを考え、連帯保証人の存在は最初から提示してください。
連帯保証人に迷惑をかけないためには?
連帯保証人に迷惑をかけたくない方は、次のポイントに注意しましょう。
- 弁護士に依頼
- 連帯保証人の自己破産を同時におこなう
- 債務整理(任意整理)を検討
一つずつ解説します。
弁護士に依頼する
自己破産で連帯保証人に迷惑をかけたくない方は、弁護士に依頼しましょう。
弁護士に借金問題を相談すると、自己破産以外の方法を提示されるかもしれません。
たとえば、債権者と交渉して返済期間を長く設定すれば、現在の状態でも完済を目指せる可能性があります。
自己破産を実行する前にまずは弁護士に相談し、より最善の解決策を探りましょう。
連帯保証人の自己破産を同時におこなう
債務者と一緒に、連帯保証人の自己破産をおこなう方法もおすすめです。
債務者が自己破産すると、連帯保証人に一括で請求されますが、連帯保証人も一緒に自己破産すれば、返済義務が消滅します。
また、一緒に自己破産すれば、債権者への大きな影響もありません。
しかし、連帯保証人が先に自己破産すると、連帯保証人を続けられない点に注意しましょう。
債務整理(任意整理)を検討する
自己破産による連帯保証人への影響が気になる方は、任意整理を検討しましょう。
任意整理とは、利息をカットして完済を目指す債務整理の一つです。
任意整理は、整理する借金を債務者が選択できるため、連帯保証が設定されている借金以外を整理すれば、迷惑をかけずに借金を整理できます。
自己破産の場合は、整理する借金を選べず、実行すると確実に連帯保証人に影響が出ます。
また、任意整理は自動車や不動産などを手元に残したまま手続きできるため、自身にとってもメリットが大きいです。
連帯保証人への影響が心配な方は、自己破産ではなく、任意整理を検討してみてください。
自己破産・連帯保証人に関するケース別の対処法
自己破産には、さまざまなケースが考えられます。
自身が債務者の場合、連帯保証人の場合など、ケースごとの対処法を事前に確認しておきましょう。
自身が連帯保証人で自己破産された場合
自身が連帯保証人で、債務者に自己破産された場合は、自身も債務整理を検討しましょう。
自身が返済できない金額を請求された場合、債務整理を実行すると返済しやすくなります。
債務整理には次の3つがあり、特徴が異なります。
債務整理の種類 | 主な手続きの内容 |
---|---|
任意整理 | 利息のカット |
個人再生 | 元本の大幅な減額 |
自己破産 | 借金の支払い義務の免除 |
任意整理と個人再生は、利息のカットや元本の減額などで返済の負担を減らし、完済を目指す債務整理です。
一方自己破産は、借金の支払い義務がすべて免除される手続きです。
自己破産は効力が大きい反面、価値がある財産を差し押さえられたり、整理する借金を選択できなかったりするデメリットがあります。
連帯保証人になり、支払いの請求を受けた方は、自身にとって最適な債務整理を選択してみてください。
相続で自身が連帯保証人になった場合
自身が相続によって連帯保証人になった場合は、相続放棄がおすすめです。
相続では、預貯金や不動産などの価値がある財産だけでなく、借金も引き継ぐ必要があります。
被相続人に借金があると知らなかった場合でも、相続した場合は相続人に返済義務が移動します。
相続から数年経過し、債権者から支払いを請求され、驚く方も多いのではないでしょうか。
相続で連帯保証人になった場合、相続放棄を実行すれば、被相続人の借金の返済義務が免除されます。
しかし、自身が相続放棄すると、他の方が相続人になり、借金の返済義務を負うため、慎重に検討しましょう。
自身で決められない場合は、相続に強い弁護士事務所の無料相談を利用してください。
連帯保証人が自己破産した場合
連帯保証人が自己破産した場合は、債務者に一括請求されるため、新たな連帯保証人を見つける必要があります。
連帯保証人になれる方は、自身に支払いの請求がきた際に、返済できる能力がある方です。
しかし、自己破産した連帯保証人は、返済能力がないと判断されるため、連帯保証人を継続できません。
例外的に、債務者が自己破産後の連帯保証人に対して継続の依頼もできますが、これまでに継続したケースは非常に少ないです。
連帯保証人が自己破産した場合は、新たな連帯保証人を見つけてください。
自己破産・連帯保証人に関するよくある質問
ここでは、自己破産や連帯保証人に関するよくある質問に回答します。
連帯保証人が死亡した場合はどうなる?
連帯保証人が死亡した場合は、基本的に相続人が引き継ぎます。
新たな連帯保証人を見つける必要はありません。
しかし、相続人が相続放棄した場合は、連帯保証人がいなくなるため、新たに見つける必要があります。
自身が自己破産すると家族に影響はある?
自身が自己破産しても、家族に大きな影響はありません。
しかし、自動車や不動産などの価値のある財産は差し押さえられ、引っ越しや転校などの影響が及ぶ可能性があります。
家族の職場や学校などへの影響はないため、安心してください。
自己破産すると連帯保証人になれない?
自己破産すると、一定期間は連帯保証人になれません。
自己破産後は、信用情報機関に5〜10年ほどの間は金融事故として記録が残ります。
連帯保証人は、債権者から請求された際に返済できる能力が必要ですが、自己破産を実行する方に金銭的な余裕があるとはいえません。
そのため、自己破産を実行し、信用情報機関に金融事故の記録が残っている間は、連帯保証人になれないと覚えておきましょう。
自己破産を実行したものの、どうしても連帯保証人になりたい方は、5〜10年経過したあとであれば可能です。
住宅ローンを返済中に自己破産したら?
住宅ローンの返済中に自己破産すると、保証人や連帯保証人に請求がいき、住宅は差し押さえられます。
請求される金額は、ローンの残額やローンの残額から住宅を売却した額を差し引いた額など、債権者によって異なります。
まとめ
今回は、連帯保証人と保証人の違いや、自己破産した際の連帯保証人への影響、連帯保証人に迷惑をかけたくない場合の対処法などを解説しました。
債務者の状態で自己破産を実行すると、連帯保証人に借金の残額が一括請求されます。
保証人に認められている分別の利益や催告の抗弁権、検索の抗弁権は連帯保証人の場合認められていないため、素直に対応する必要があります。
請求された結果、返済する余裕がない連帯保証人は、自己破産を実行する場合も多いです。
自身の借金で連帯保証人に迷惑をかけたくない方は、弁護士に相談し、自己破産以外の債務整理を検討してみてください。