消費者金融からの借金でお困りの方の中には「借金が時効で帳消しになるって本当」「借金の時効が成立するタイミングは」などの疑問を抱いている方もいるでしょう。
消費者金融の借金は、一定の条件を満たせば時効が成立し、支払い義務がなくなります。
借金の時効が成立すると、借金がなくなるほか、信用情報機関に登録されている内容が消えるメリットもあります。
一方で、時効になった借り入れ先の利用ができなかったり、信用情報に傷がつく可能性があったりするなどのデメリットもあるため注意が必要です。
本記事では、消費者金融からの借金が時効になるための条件や、時効が成立した際のメリットやデメリットについて詳しく解説します。
また、借金の時効に必要な時効援用通知書の書き方もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
消費者金融からの借金を時効にできる?
消費者金融においても、借金には時効の規定が存在し、一定期間が経過すると返済の義務が消滅します。
借金では借りた側に返済の義務(債務)を生じさせる一方で、貸した側は返済を受ける権利(債権)を有します。
債務と債権の関係は法的に認められており、債権者は一定の要件を満たせばその権利を行使可能です。
権利を利用しない期間が長期間にわたると、法律上の効力を失う場合があり、この法律上の効力喪失を消滅時効といいます。
ただし、消費者金融の借金において時効を成立させるためには、非常に厳しい条件をクリアする必要があります。
そのため、時効の成立によって借金が帳消しになるケースは多くありません。
消費者金融で借金が時効になる条件
消費者金融で作った借金が時効になるためには、次の条件を満たす必要があります。
- 最終返済日から5年が経過している
- 時効援用通知書を送付する
- 時効が中断や停止していない
消費者金融からの借金の時効は、多くの場合、最後に取引をした日から5年です。
債務者がたとえ1円でも返済行為をおこなっていれば、その日が最後に取引がおこなわれた日とみなされます。
また、無事に時効が成立したとしても、時効を有効にするためには、時効の援用をしなければなりません。
時効の援用によって、時効が完成していることを相手に主張しなければ、時効は成立しないからです。
時効が中断や停止していないことも重要な条件です。
債権者が債務者に督促をしたり、裁判を起こしたりしたら時効が中断または停止します。
消費者金融から借金の時効が中断・停止しているケース
時効の中断とは、一定の法的事由が生じると、これまで進行していた時効期間の効力が一時的に失われることを指します
また、時効の停止は、一定の法的事由が生じた際に、一時的に時効の進行が阻止される制度です。
消費者金融から借金の時効が中断や停止する事由には、主に次のようなものがあります。
- 消費者金融から返済の催促があった場合
- 債務者の給与や財産を差し押さえられた場合
- 一部返済や返済の意思を示した場合
- 返済を求める裁判を起こされた場合
時効の中断や停止があると、時効のカウントは原則何回でもストップ、リセットします。
つまり、永久に時効が成立しないこともありえるわけです。
時効が完成しているかどうかわからない場合は、弁護士などの専門家に依頼して判断してもらいましょう。
借金の時効に必要な時効援用通知書
時効の援用は、債務者が債権者に対して時効援用通知書を送付しておこなわれます。
時効援用通知書は、時効の援用をおこなったことを証拠として残すため、内容通知書で送るのが一般的です。
内容証明郵便とは、郵便局が特定の郵便物の発送において、発送日時、差出人、内容、受取人などの情報を証明する制度です。
時効援用通知書には明確な標準書式は存在しませんが、最低限記載すべき重要な項目があります。
この章では、時効援用通知書の書き方と作成時の注意点について説明するため、ぜひ参考にしてください。
時効援用通知書の書き方
時効援用通知書に最低限記載すべき項目は、次のとおりです。
- 消滅時効を援用する旨
- 差出人の情報
- 時効を援用する日付
- 債権を特定する情報
消滅時効を援用する旨の記載がなければ、時効援用通知書としての効力を有しません。
援用通知書の効力を確実に発揮するためにも、適切な表現で消滅時効を援用する旨を伝えましょう。
送付者を明確にするためには、差出人の情報も必要です。差出人の氏名、住所、連絡先を記載してください。
弁護士や司法書士などの専門家に代理人を依頼している場合は、代理人の情報を差出人として記載しましょう。
時効を援用する日付は、書類を送付する日付で問題ありません。時効援用通知書を送付した日付が記載された書類を必ず保管しておきましょう。
また、消滅時効を援用する債権を特定できるように、次の情報を記載する必要があります。
債権者の情報(個人) | ・住所 ・氏名 |
債権者の情報(法人) | ・名称 ・本店住所 ・代表者の氏名 |
債権 | ・債権の性質 ・金額 ・発生日 ・最終返済日 |
債務者 | ・氏名 ・生年月日 ・住所 ・会員番号 |
時効援用通知書の注意点
時効援用通知書を送付する際には、必ず時効が成立しているかを確認しましょう。
時効期間が経過する前に送付すると、債権者が時効成立を防ぐための措置をとる可能性があるため注意が必要です。
時効を確認する際は、次の2点に注意してください。
- 時効成立の起算日
- 時効がストップする措置を取られていないか
時効成立の起算日の基本的な考え方は、次のとおりです。
- 権利を行使できる時から10年(客観的起算点)
- 権利を行使できることを知った時から5年(主観的起算点)
上記のうち、いずれか早いほうとなります。一度でも返済をおこなうと時効はリセットされ、起算して5年または10年となることも覚えておきましょう。
また、債権者が、次のような措置を時効がストップする前に取った場合、時効はストップします。
- 差し押さえ
- 裁判上の請求、督促
- 債務者の承認
- 催告
上記のような措置を取られている場合、時効がストップされるだけでなく、最悪の場合には差し押さえがおこなわれる可能性が高いでしょう。
借金の時効が成立した際のメリット
借金の時効が成立した際のメリットは、次の2つです。
- 時効が成立すると借金がなくなる
- 信用情報機関からの登録が消える
それぞれ解説します。
時効が成立すると借金がなくなる
時効が成立し、時効援用の手続きを正確におこなうことで、借金の返済義務が消滅します。
時効が成立すると、債務は法的に消滅し、債務者は借金を返済する義務を持たなくなるからです。
また、借金の返済義務がなくなれば、借金の取り立てを受けることもなくなります。
返済が困難で借金の取り立てに悩んでいた方は、返済に対する不安やストレスから解放されるでしょう。
ただし、時効援用の手続きには正確性が求められるため、専門家のアドバイスを仰ぐことが重要です。
信用情報機関からの登録が消える
時効援用をおこなった借金は返済義務がなくなり、完済と同等の扱いとなります。
そのため、借金の延滞によりこれまで信用情報機関に登録されていた事故情報が抹消される可能性が高いです。
信用情報機関に登録されている事故情報が抹消されると、次の取引においても利便性が向上し、大きな金額の買い物をしやすくなるでしょう。
- 現在所有しているクレジットカードの利用
- 新規のクレジットカードの申し込み
- 新規のローンの借り入れ
信用情報に影響が及ぶと、上記のように経済的な活動にポジティブな影響をもたらします。
借金の時効が成立した際のデメリット
借金の時効成立にはメリットがある一方で、デメリットもあるため注意が必要です。
主なデメリットは、次の2つです。
- 時効になった借入先の利用ができない
- 信用情報に傷がつく可能性がある
それぞれ解説します。
時効になった借入先の利用ができない
借金の時効が成立すると、時効になった借り入れ先は二度と利用できません。
また借り入れ先にグループ企業がある場合、そこからの借り入れも同様にできなくなるでしょう。
一つのグループに属する会社は相互に情報を共有しているため、グループ企業からの借り入れも制限される可能性があります。
信用情報に傷がつく可能性がある
借金の情報は、利用中のカードローン会社に記録されるのはもちろん、個人信用情報機関にも記録されます。
借金が時効となり支払いをおこなわなかった場合、信用情報に傷がつく可能性があるため注意が必要です。
信用情報に傷がついてしまうと、クレジットカードやローンの審査に通らなくなるなど、さまざまな弊害が生じるでしょう。
信用情報機関には、申し込み情報などの一部の情報は6か月を超えない期間で保持されますが、注意情報と呼ばれる延滞の踏み倒しや不履行などの情報は5年と長期間にわたり残存するため、債務の返済には細心の注意が必要です。
ただし、信用情報機関に記録されるのは、登録番号のある合法な金融業者のみです。
金融庁の許可を受けていない違法業者や闇金融の場合は、そもそもお金を貸付する行為自体が違法なため、信用情報には記載されません。
時効の成立は難しい?債務整理の検討
消費者金融の借金において、時効が成立するのは非常に困難です。
時効の成立が難しい方は、債務整理を検討してみましょう。
債務整理の方法は、次のとおりです。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
それぞれ解説します。
任意整理
任意整理は、債務者が債権者と直接交渉し、返済条件の見直しや利息のカットなどをしてもらう手続きです。
債務者は、弁護士や司法書士を通じて交渉をおこなうこともありますが、裁判所を介さずに自主的に進められる点が特徴です。
任意整理は債務者と債権者の間で合意に基づいておこなわれる手続きであるため、財産を失うリスクはありません。
任意整理を選択する際には、借金の種類を選べるため、車のローンや住宅ローン、利用停止を避けたいクレジットカードなどを選択しなければ、車や家を失う心配はなく、クレジットカードも継続して利用可能です。
個人再生
個人再生は裁判所を介しておこなわれる手続きです。
個人再生をおこなうと、債務者が所有する財産の額に応じて借金の総額が5分の1〜10分の1程度に減額されます。
減額された借金は、原則として3~5年の期間で返済しなければなりません。
また、所有する財産の額が少なければ、それに応じて減額される借金の額も大きくなる傾向があります。
個人再生は自己破産とは異なり、家や車などの財産を残せるのも特徴です。
ただし、個人再生手続きをおこなった後も、債務者は引き続き返済をおこなう必要があるため、収入が不安定な場合や、返済が困難な状況の場合は、個人再生の手続きが認められない可能性があります。
自己破産
自己破産は、債務者が裁判所を通じておこなう手続きであり、借金全額の返済義務が免除される債務整理です。
借金は完全に免除されますが、一定以上の財産を所有している場合には、その一部またはすべてが没収され、債権者に分配されることとなります。具体的な没収範囲は、法律に基づいて裁判所が決定します。
自己破産は、借金の返済が困難な方に適している手続きです。
借金が膨らみ、返済がどうしても難しい状況にある場合や、借金返済により生活が苦しくなる場合には自己破産を検討しましょう。
ただし、自己破産は重大な法的手続きであり、長期的な影響が及ぶ可能性があるため、判断は慎重におこないましょう。
借金の時効に関するよくある質問
借金の時効に関するよくある質問は、次のとおりです。
- 弁護士や司法書士に依頼せず、時効を成立させることは可能?
- 消費者金融からの和解の提案はある?
- 時効の確認方法は?
それぞれ解説するため、ぜひ参考にしてください。
弁護士・司法書士に依頼せず、時効を成立させることは可能?
時効援用の内容証明は必ず専門家に依頼する必要はなく、自身で作成して発送もできます。
とくに請求額が少額であり、専門家に支払う費用よりも低く抑えられる場合は、個人が自己申請をおこなうケースもあります。
ただし、相手から請求書が来ていなかったり、信用情報を取得して確認もしていなかったりする場合には、自身で内容証明を作成して送付するのはおすすめできません。
自身で作成して送付する場合には、請求書に基づいて正確な内容を作成するか、信用情報の記載を確認してからにしましょう。
もし何も資料が手元になく、情報が不十分な場合は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼するとよいでしょう。
消費者金融から和解の提案はある?
和解とは、借金問題において債権者と債務者の間で、今後の返済方法について合意することです。
債務者は借金をしている消費者金融から和解の提案をされることがあり、返済が遅れている状況で和解が成立すると、以前よりも返済が楽になることがメリットです。
提案される和解例としては、次のようなものがあります。
- 毎月の返済を減額
- 返済期間の調整
- 利息の一部もしくは全額免除
- 遅延損害金の一部もしくは全額免除
ただし、債務者の返済義務がすでに時効により消滅しているケースで、債権者がもともとの残高から大幅に減額した額を支払えばよい、といった和解案を提示してくることがあります。
そうした場合、安易に和解に応じてしまうと、結果的に損をする可能性があるため注意が必要です。
和解案が有利に見える場合でも、返事をする前に、本当に和解しても問題ないのかを弁護士に相談してみることをおすすめします。
時効の確認方法は?
借金を消滅時効で解決するためには、最終返済日がいつなのかが重要です。
最終返済日の確認の仕方は、次のとおりです。
- 郵便物をチェックする
- 信用情報を確認する
借金返済を延滞していると、債権者からハガキや封書で督促状が送られてきます。
そうした書類の内容を見ると、最終返済日や弁済期日が記載されていることがあるため、そこから時効が成立しているかどうか計算できます。
通知書が手元になかったり、返済期日が分からなかったりする場合は、債権者に対して情報の開示を求めることが可能です。
ただし、個人でおこなう場合、不用意な行動を取ってしまい、時効が中断される可能性があるため注意が必要です。
また、個人信用情報は信用情報機関により管理されており、借金の最終返済日や延滞発生日が登録されています。
主な信用情報機関は次のとおりです。
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
- 日本信用情報機構(JICC)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
ただし、信用情報機関にはすべての債務情報が登録されているわけでないため、必要な情報が含まれているかどうか慎重に確認しましょう。
まとめ
消費者金融の借金においても、一定の期間が経過すると時効が成立するケースがあります。
ただし、時効の成立に必要な条件は非常に厳しいため、時効を狙うことは困難です。
また、時効が成立しなかった場合は多額の遅延損害金が発生するなどのリスクも考慮しなければなりません。
そのため、時効の成立を狙うよりも、債務整理による借金問題の解決がおすすめです。
債務整理は手続きが複雑であり、一般的には専門家に相談して進めることが推奨されています。
専門家は時効が成立するかどうかの見極めもおこなってくれるため、まずは専門家に相談し、時効成立が難しそうであれば債務整理を検討してみましょう。