法律に関して相談したいことがあり、法テラスの利用を検討する方は少なくありません。
法テラスは国により設立された公的な法人であり、無料の法律相談も実施されています。
しかし具体的に法テラスでどのくらいの費用がかかるのか、そもそもどのような方が法テラスを利用できるのかわからず、悩んでいる方もいるでしょう。
そこで本記事では法テラスの基本情報と法テラスでかかる費用、費用免除の条件を解説します。
法テラスを利用するか悩んでいる方、法的トラブルに巻き込まれている方はぜひ参考にしてみてください。
法テラスとは
法テラスとは、法的トラブル解決を目的として国により設立された案内所です。
法的トラブル解決に向けて必要な情報へスムーズにアクセスできるよう、サポートする目的で運営されています。抱えているトラブルについて、誰に相談すればよいのかわからないときに利用しましょう。
法テラスの電話連絡先は、0570-078374です。平日は9時から21時、土日祝日は9時から17時の間で問い合わせを受け付けています。
悩みの内容ごとに電話連絡先がわかれているケースもあるため、まずは公式サイトを確認してみてください。法テラスには無料の問い合わせ窓口があり、情報提供を受けるのみであれば費用は発生しません。
しかしその後専門家に相談、依頼した場合、内容に応じて費用の支払いが必要です。
法テラスの主な2つの業務内容
法テラスの主な業務内容は、次の2つです。
- 情報提供業務
- 民事法律扶助業務
相談のまえに、具体的にどのような業務をしているのか確認しましょう。
情報提供業務
情報提供業務は、問い合わせや相談の内容に応じて適切な専門家や機関を紹介する業務です。
トラブルの内容に応じて法律に関する説明も受けられるため、どのように解決すればよいのかわからない問題も気軽に相談できます。
法テラスでは、次のように複数の問い合わせ窓口を用意しています。
- 電話
- 事務所
- メール
対面で話を聞きたい方は、各都道府県に設置されている地方事務所や法テラス支部を利用しましょう。
民事法律扶助業務
法テラスでは民事法律扶助業務として、金銭的に法的トラブルの解決が難しい方に代わり費用の立て替えをおこないます。
裁判、交渉などの手続きにかかる費用や弁護士、司法書士費用などは、法テラスに立て替えを依頼できます。
立て替え制度の利用には条件がありますが、お金の問題で専門家への依頼が難しい場合は相談してみてください。
費用を法テラスに立て替えてもらった場合、その後は分割で法テラスに費用を返済します。月々の返済額は個人により異なりますが、5千円~1万円が目安です。
民事法律扶助の3つの利用条件
法テラスで民事法律扶助を利用するためには、次の条件を満たす必要があります。
- 資産・収入などの資力が一定額以下であること
- 勝訴の見込みがないとはいえないこと
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
自身の状況で必要な条件を満たせているか、確認しましょう。
資産・収入などの資力が一定額以下であること
収入が高い方、多額の資産を有する方は民事法律扶助の対象となりません。
お金に余裕のある方は自身で弁護士や司法書士に依頼し、問題解決を図りましょう。
民事法律扶助の対象となるためには、収入基準と資産基準を満たす必要があります。収入基準では、申し込みをした方と配偶者の手取り月収額が下記の金額以下でなければいけません。
世帯の人数 | 手取り月収額※1 | 家賃または住宅ローンの費用を負担している場合に 加算できる限度額※2 |
---|---|---|
1人 | 18万2,000円 (20万200円) | 4万1,000円 (5万3,000円) |
2人 | 25万1,000円 (27万6,100円) | 5万3,000円 (6万8,000円) |
3人 | 27万2,000円 (29万9,200円) | 6万6,000円 (8万5,000円) |
4人 | 29万9,000円 (32万8,900円) | 7万1,000円 (9万2,000円) |
※2:東京都特別区に住んでいる場合は()内の基準を適用
資産基準では、申し込みをした方と配偶者の持つ資産額の合計が次の金額以下であることが求められます。
世帯の人数 | 資産合計額 |
---|---|
1人 | 180万円 |
2人 | 250万円 |
3人 | 270万円 |
4人 | 300万円 |
ただし上記以外にも細かな条件が複数あります。まずは無料相談で詳細を確認してみてください。
勝訴の見込みがないとはいえないこと
勝訴の見込みがまったくない場合、民事法律扶助は利用できません。和解、調停、示談など法的な措置で解決できないときは、他の方法を検討しましょう。
ただし法律に詳しくない方が勝訴の見込みについて判断するのは非常に難しいです。
まずは法テラスに問い合わせ、今後法的に対応していくことができるか聞いてみましょう。
また自己破産ができない場合も、民事法律扶助の対象外となります。自己破産は申請すれば必ずできるものではなく、裁判所からの免責許可が必要です。
ギャンブルが理由で借金をしている方、返済能力がある方に免責許可はされないため、民事法律扶助の対象にはなりません。
民事法律扶助の趣旨に適すること
民事法律扶助は、経済的に余裕がない方が法的トラブルを解決できるようサポートする目的で導入されている制度です。
報復のため、宣伝のために民事法律扶助を利用するのは本来の趣旨に反するため、民事法律扶助の対象外となります。
また正当な権利の行使とは認められない場合も、援助の対象外です。
自身の都合のみで法テラスを利用しないよう、心がけましょう。
法テラスの費用の免除の条件
法テラスでは、費用の免除に条件が設けられています。
ここからは費用の免除条件や費用の返済について、次のポイントから解説します。
- 費用の立て替えは返済義務がある
- 生活保護受給者は費用の返済が免除される
- 生活保護受給者以外で費用の返済が免除される場合
条件を満たしていれば、費用を抑えて法律問題を解決できます。
条件に当てはまるか、確認してみてください。
費用の立て替えは返済義務がある
法テラスでは経済的に苦しい方を対象とした、費用の立て替え制度を用意しています。
しかし返済免除の条件に該当しない場合、費用を立て替えた場合は法テラスへの返済義務が発生します。
返済は分割でおこなえるものの、大きなトラブルであれば長期間の返済が必要となるでしょう。毎月法テラスに返済する金額の目安は、5千円〜1万円です。
トラブル解決に必要な金額が20万円の場合、返済までに少なくとも20か月はかかります。実際に発生した費用にあわせて、長期的な返済プランを考えておきましょう。
生活保護受給者は費用の返済が免除される
生活保護を受給している場合、費用を支払うのは難しいと考えられるため費用の返済は免除されます。
弁護士費用、書類作成費用などの支払いが難しい場合は、トラブル終結後に償還免除申請書を法テラスの本部に提出します。
書類提出後、審査の結果に応じて費用の返済が免除されます。
だし内容により、支払いのタイミングが猶予されるのみのケースもあります。
詳しい手続きや免除の申請方法については、法テラスで確認してみてください。
生活保護受給者以外で費用の返済が免除される場合
生活保護を受けていない場合、費用返済免除の措置を受けられるのは次の3つの条件をすべて満たす方のみです。
- 収入要件
- 資産要件
- 資力回復困難要件
収入要件は民事法律扶助の対象要件より厳しく、次のとおり定められています。
世帯の人数 | 手取り月収額※1 | 家賃または住宅ローンの費用を負担している場合に加算できる限度額※2 |
---|---|---|
1人 | 127,400円以下 (140,140円以下) | 4万1,000円以下 (5万3,000円以下) |
2人 | 175,700円以下 (193,270円以下) | 5万3,000円以下 (6万8,000円以下) |
3人 | 190,400円以下 (209,440円以下) | 6万6,000円以下 (8万5,000円以下) |
4人 | 209,300円以下 (230,230円以下) | 7万1,000円以下 (9万2,000円以下) |
※2:東京都特別区に住んでいる場合は()内の基準を適用
また資産要件はさらに厳しく、現金と預金、保険の解約返戻金や有価証券などすべての資産の合計額が66万円以下でなければいけません。
さらに資力回復困難要件として高齢者であること、病気や障害があり働けないこと、などを満たしている必要があります。
もし条件に当てはまる場合は、償還免除及び猶予申請書」「免除に関する確認票」「同確認票に記載された資料」を事件解決後、法テラス本部に提出してみてください。
法テラスを利用する2つのメリット
法テラスの利用には、次のメリットがあります。
- 弁護士費用が抑えられる
- 分割払いができる
法テラスを利用するか悩んでいる方は、メリットの詳細を確認してみてください。
弁護士費用が抑えられる
法テラスを利用した場合、通常より少ない弁護士費用で法的トラブルが解決できます。たとえば離婚調停の場合、法テラス埼玉で目安とされている弁護士、司法書士費用は合計13万円です。
一方、民間の弁護士事務所に依頼した場合、離婚調停にかかる費用の目安は50万円程度です。離婚調停以外の手続きでも、法テラスを利用すれば支払う弁護士費用を大きく減らせます。
ただし法テラスを通じて法的トラブルを解決できるのは、民事法律扶助の対象となる方のみです。
分割払いができる
法テラスで民事法律扶助を利用できる場合、月1万円程度の分割払いが可能です。そのため弁護士費用や司法書士費用を一気に支払えない方も、法的トラブルを解決できるでしょう。
月々の分割支払額は、個人の資力や状況、返済額の合計などにより決定されます。毎月何円程度の返済額になるか問い合わせ時に聞いてみるとよいでしょう。
法テラスを利用する2つのデメリット
法テラスを利用する際は、次の2つのデメリットに注意しましょう。
- 専門家との無料相談は利用できる方が限られている
- 審査に時間がかかる
法テラスは便利なサービスですが、状況により他の相談窓口を利用した方がよいケースもあります。デメリットを確認し、自身の状況にベストな相談場所を探してみてください。
専門家との無料相談は利用できる方が限られている
法テラスでは法律の専門家との無料相談を実施していますが、利用できる方には制限があります。
無料相談を希望する場合、収入や資産の要件を満たしているかどうか、まずはサポートダイヤルで確認を受けましょう。
ただし条件を満たす方でも、無料法律相談を受けられるのは1回30分程度、最大3回までです。
一方、法テラススタッフによる情報提供は誰でも無料で受けられます。法律関係のトラブルを抱えているものの、相談場所や法制度がわからないと悩んでいる方は、法テラスのサポートダイヤルで相談してみてください。
サポートダイヤルは0570-078374で、受付時間は平日9時から21時、土曜9時から17時です。
審査に時間がかかる
法テラスを利用して弁護士や司法書士に依頼する場合、民事法律扶助の対象となるかどうか審査が実施されます。審査では、民事法律扶助の条件を満たすかどうか複数の書類で細かく確認されます。
最短でも審査には2週間の時間がかかるため、急いでいる場合は民間の弁護士事務所や司法書士事務所に直接相談しましょう。ただし緊急性が高いトラブルの場合、法テラス側が急いで審査を実施するケースもあります。
また弁護士や司法書士が審査の結果を待たず動いてくれる可能性もあります。急ぎで対応が必要なときは、問い合わせの段階でスタッフの方に相談してみてください。
法テラスに関するよくある質問
ここからは法テラスに関するよくある質問と回答を3つ紹介します。
- 電話で法律相談はできますか?
- 法テラスはどのような方におすすめですか?
- 無料相談に回数の制限はありますか?
法テラスについての理解を深めるため、相談のまえにぜひチェックしてみてください。
電話で法律相談はできますか?
弁護士や司法書士との法律相談は、基本的に対面で実施されます。電話で予約を取り、近隣の法テラスに向かいましょう。
どうしても近くに事務所がない場合は、出張相談も依頼可能です。資力が一定を超える方が出張相談を依頼する場合、法律相談料5,500円(税込)の負担が必要となります。
法テラスにおいて、法律の専門家と電話での相談ができるかどうかは不明です。外出に不安がある方、周りの方に法テラスの利用を知られたくない方はまず法テラスサポートダイヤルで事情を伝えてみてください。
なお、法テラススタッフから法律関連の情報提供を受けるのみであれば電話で完結します。電話で情報提供を受けたい方は、法テラスサポートダイヤル(0570-078374)に連絡してみてください。
法テラスはどのような方におすすめですか?
法テラスは法律問題を解決したいものの、経済的に弁護士や司法書士に相談できない方におすすめです。
収入や資産に条件はあるものの、法テラスなら費用の支払いが難しい場合でも専門家に対応を依頼できます。また無料で法律相談を受けられるため、専門的な知識が少ない方も安心でしょう。
情報提供を受けるのみであれば、経済的な事情とは関係なく誰でも無料で問い合わせができます。弁護士や司法書士に相談したいけれど、いきなり事務所に行くことに抵抗がある方は、法テラスに相談してみましょう。
無料相談に回数の制限はありますか?
収入や資産の条件を満たした方でも、弁護士や司法書士による無料相談を利用できるのは最大3回です。
また相談時間は1回あたり30分程度と定められています。短い時間で相談できるよう、話したいことを事前にまとめてから法テラスに向かうとよいでしょう。
まとめ
今回は法テラスの業務内容と利用条件、費用と費用免除の条件などについて解説しました。
法テラスでは経済的に弁護士や司法書士への依頼が困難な方に向けて、費用立て替え、返済免除などの制度を提供しています。また幅広い方に対して、法律に関連する情報提供も実施しています。
身近なトラブルに悩む方、法律関連で悩みを抱えている方は、法テラスに相談してみましょう。
ただし法テラスで費用免除を受けるためには、複数の条件を満たす必要があります。細かな要件も多いため、条件について不明な点がある場合は法テラスで詳しい話を聞いてみてください。
※本記事の情報は2023年8月時点のものです。
※本記事は公開・修正時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。キャンペーンを含む最新情報は各サービスの公式サイトよりご確認ください。
※本記事で紹介しているサービス・商品に関するお問い合わせは、サービス・商品元に直接お問い合わせください。